でもそんなの関係ない──『新しい道徳』

  • 1. 道徳はツッコみ放題
  • 2. ウサギはカメのあいてなんかしない
  • 3. 原始人に道徳の心はあったか
  • 4. 道徳は自分で作る
  • 5. 人類は道徳的に堕落したのか
  • おわりに
  • 参考資料 

「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか、というフレーズを添え、世の中で押し付けられている道徳なるものにツッコミまくります。現代に子供の教育や社会の常識など様々な場面で押し付けられている「道徳」に対して、本当に必要な道徳とは何かを求め、新しい道徳と題しているのでしょうか。ツッコミを入れていく中で得られるその道徳は、本来道徳はどういうものか、なんで道徳が生まれたのかと遡っていき、むしろ古い道徳と呼ぶべきものかもしれません。

人に言う前にまず自分から。どう生きるかを自分が考えて抜いてこそ、それは血の通った道徳になります。一見道徳から遠いところにあるような芸人が、本当は一番道徳に近いのではと感じさせるところが面白いところです。

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共感せずんば人にあらず──『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(Do Androids Dream of Electric Sheep?)』

  • 物語について
  • キーワード
  • タイトルについて
  • 格付けと疎外
  • 潜在する社会的脅威と開拓
  • 本当の共感
  • おわりに
  • 参考資料

そのキャッチーなタイトルと、映画『ブレードランナー』の原作としても有名な、Philip K. DickによるSF小説。人間によって作られた電気動物やアンドロイド、感情を作る情調《ムード》オルガンとの関わりを描くことによって、「人間とは何か」というテーマに切り込んだ作品になっています。

キリスト教的価値観が至るところに反映されているせいか、日本人の自分としては少し読みづらいところがあったり、物語の前半は展開が鈍いところがあります。舞台設定や哲学的問いかけ方に重点がある作品なのではないでしょうか。

どうやって読み解けばいいのか自分にはちょっと考えあぐねていたのですが、訳者あとがきを読むと読解の方針が示されているので、そこに頼り、人間性とアンドロイド性、感情移入をキーワードに感想をまとめたいと思います。

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物語はかく語りき──『カオスの紡ぐ夢の中で』

  • 複雑系へのカオス的遍歴
    • 複雑系とは
    • 問題意識
      • 世界のモデル化
      •  ルールと生成
      • 偶然と必然
      • 相補性 
    • カオスの性質
  • カオス出門
  • 小説 進物史観──進化する物語群の歴史を見て
  • バーチャル・インタビュー──あとがきにかえて
  • おわりに
  • 参考資料
    • 関連資料 
    • 関連資料

金子邦彦さんが1990年代に雑誌に掲載していたものをまとめて、2010年に発行された本です。科学の方法、物の見方に関しての、著者の考えをエッセイや小説という形でまとめています。

自分でそういう科学していない人にも、至るところに用語が散りばめられているので勉強の糸口として利用できたり、社会的なことと絡めても読めるような気がします。

自分は、複雑系を捉えるためのアイデアを少しでも吸収できるように読んでいきたいです。

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お前の光は、今、何処にある──『意識はいつ生まれるか(Nulla di più grande)』

  • 1. 手のひらに載った脳
  • 2. 疑問が生じる理由
  • 3. 閉じ込められて
  • 4. 真っ先に押さえておきたいことがら
  • 5. 鍵となる理論
  • 6. 頭蓋骨のなかを探索してみよう
  • 7. 睡眠・麻酔・昏睡 意識の境界を測る
  • 8. 世界の意識分布図
  • 9. 手のひらにおさまる宇宙
  • おわりに
  • 参考資料
    • 関連資料 

マルチェッロ・マッスィミーニ(Marcello Massimini)とジュリオ・トノーに(Giulio Tononi)の共著による、一般向けの意識に関する書籍です。二人ともイタリア出身の模様。

本文においては、数式で説明することはせず、理論を生む背景となったエピソードやそこへの著者の考えが綴られています。それでも、理論のエッセンスと勢いが伝わってきます。

意識とはなにか、というのは魅力的な問いで、未だ答えの出ていない問題ではありますが、この統合情報理論では意識と意識でないものの境界がどこにあるかということに対し、一つの見方を与えてくれるようです。

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求めよ、さらば与えられん──『アフォーダンス』

  • 1. ギブソンの歩み
  • 2. ビジュアルワールド
  • 3. 情報は光の中にある
  • 4. エコロジカル・リアリズム
  • 5. 知覚システム
  • 6. 協調構造
  • おわりに
  • 参考資料
    • 関連資料

アフォーダンス理論はJames J. Gibsonが提唱した、知覚についての理論です。これが人工知能の設計やアート、デザインの分野でも注目されているらしい。

たとえば、人工知能ではフレーム問題というのがあります。フレーム問題とは、無限の選択肢と無限の探索深度があるために、起こりうる問題総てに対処することはできないという問題のことで、例えばロボットになにか作業をさせる場合に、どうすればあらゆる状況に対応できるようにプログラムできるかというのを考えることになります。

これが、従来の知覚に対する考え、つまり情報を上手くインプットして、それを上手く処理して、それによって行動に移すというモデルでは、実行時間という観点などからも現実的には上手く行かない。

そこでそれを解決するべく考え出されたのがアフォーダンス理論というわけです。

行動を上手く生み出せるような、知覚の仕方、というのはロボットに限らず我々人間にとっても重要なことなのではないでしょうか。自分の生活にどう活かせるかに注目しながら読んでいこうと思います。

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大切なものを見つけるために──『方法序説(Discours de la méthode)』

  • 第1部(科学に対する考察)
  • 第2部(方法の基本原理)
  • 第3部(道徳原則)
  • 第4部(神と魂の存在証明)
  • 第5部
  • 第6部
  • おわりに
  • 参考資料
    • 関連資料

René Descartes(1596-1650)はフランスの哲学者、数学者、科学者

です。1歳のときに病弱な母をなくしています。 10歳でLa Flèche学院に入学。18歳で卒業。その後大学へ進み、法学と医学を学び、20歳で卒業しました。

1628年にオランダに移住し、1637年に『方法序説』を公刊。もとは、『理性を正しく導き、学問において真理を探求するための方法の話〔序説〕。加えて、その方法の試みである 屈折光学、気象学、幾何学』であったが、現在は序文だけを取り出したものがよく読まれています。

デカルトは学生時代は真面目に学問に打ち込んでいたが、卒業後は書物で学ぶ学問に縛られず世間に学びました。その中であらゆる学問の基礎である哲学に対する、厳密性の必要性を感じていったのだと思われます。それを追求するための方法を考えたところに、近代哲学の父と呼ばれる所以があるのでしょう。

自分の今までの方法や考えてきたことと照らし合わせながら見ていきます。

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生きよ、そなたは美しい──『利己的な遺伝子(The Selfish Gene)』

  • 1. 人はなぜいるのか(Why are people?)
  • 2. 自己複製子(The replicators)
  • 3. 不滅のコイル(Immortal coils)
  • 4. 遺伝子機械(The gene machine)
  • 5. 攻撃−安定性と利己的機械(Aggression: stability and the selfish machine)
  • 6. 遺伝子道(Genesmanship)
  • 7. 家族計画(Family planning)
  • 8. 世代間の争い(Battle of the generations)
  • 9. 雄と雌の争い(Battle of the sexes)
  • 10. ぼくの背中を掻いておくれ、お返しに背中をふみつけてやろう(You scratch my back, I'll ride on yours)
  • 11. ミーム−新登場の自己複製子(Memes: the new replicators)
  • 12. 気のいい奴が一番になる(Nice guys finish first)
  • 13. 遺伝子の長い腕(The long reach of the gene)
  • おわりに
  • 参考資料
    • 今後参考にしたい資料

『The Selfish Gene』は1976年に刊行されたRichard Dawkins(1941~)の処女作だ。ドーキンスは進化生物学と行動生物学(ethology)を専門としており、自然淘汰においての基本単位は遺伝子が中心であるという考えを提唱している。

そのキャッチーなタイトルからも伺えるように、この本は数式は使わず擬人的な比喩によって、読み手のイマジネーションに訴えかけてくる。ダーウィンが主張した自然淘汰を個体ではなく遺伝子の視点から語ることで新しい見方を提示し、さらに論理を発展させている。

通常、科学といえば研究対象をモデル化することで何か新しい知見を得ようとする。そのモデルは我々人間の手で、作り出され作り変えられていくわけなのだが、遺伝子というのは自ら一貫性を保ちつつ進化していく。こういう枠組みで考えると、全く生物学に縛られない一般的にも魅力的な概念だ。そういうわけで、著者の文章をたよりに僕も遺伝子の戦略を学びんでいきたい。

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